E-DSAP
災害時、医師や看護師などの医療スタッフは切実に必要とされる存在です。
被災地の救援には自衛隊や警察、消防、医師、DMAT、日本赤十字社の活躍が目立ちますが、これらチームの中にいる多くの薬剤師も活躍しています。
江戸川区で活躍する薬剤師は、災害時には自分達が所属する薬局・病院・卸・製薬メーカーなどの機能回復に努めることはもちろんですが、初動医療体制の中で、江戸川区が設置する緊急医療救護所や医療救護所での調剤業務、薬事センター・配送センターでの医薬品供給業務、薬剤師班活動拠点での江戸川区災害薬事コーディネーターとしての活動に従事することが決められています。
2013年5月、災害時に「何かをしたいが何も出来ない薬剤師」ではなく、「出来る事からまず始める薬剤師」を一人でも多く確保するためにDSAPプロジェクトは始まりました。まず始めに東日本大震災を教訓にどうしたら災害時に薬剤師が現場で役に立つ活動が出来るのか?東北の被災地に赴き問題点を洗い出し、解決策を考え、江戸川災害時支援認定薬剤師(E-DSAP)を制度として作り上げて参りました。
E-DSAPは、【災害時の支援活動に従事できる薬剤師】
【災害時に行政の動きに添って統率した行動の取れる薬剤師】
【発災から72時間、他地区からの医療支援が来るまでの間行動できる薬剤師】を目指しています。
そのためE-DSAP認定研修会は年度ごとに全4回の研修会を修了した薬剤師をE-DSAP認定薬剤師として認定しています。2023年度までの修了者は126名となりました。認定者に対しては継続研修会とスキルアップ研修会を毎年実施してフォローアップをしています。
2017年度からは薬剤師班災害時情報共有システムeST-aidを採用しました。eST-aidは江戸川区薬剤師会とエスト株式会社とで共同開発し、東京都福祉保健局発行の「災害時における薬剤師班活動マニュアル」に準拠して構築したシステムです。災害時に[薬局][緊急医療救護所薬剤師班][薬剤師会災害対策本部]の3ヶ所で[薬剤師][医薬品]等の情報を同時に管理できるシステムとなっており、薬局・薬剤師用をaid-employee、緊急医療救護用をaid-Station、災害対策本部用をaid-Topと名づけました。eST-aidはネット上で情報共有をするシステムなので普段から薬局に居ながらネット上でバーチャル訓練を実施することが出来る利点があります。これからは様々な想定でバーチャル訓練を実施してE-DSAP認定薬剤師のレベルアップを行って参ります。
PhDLS
2023年より一般社団法人日本災害医学会認定災害薬事研修(PhDLS:Pharmcy Disaster Life Support)プロバイダーコース(第7回東京@えどがわPhDLSプロバイダーコース)を江戸川区で実施しています。
プログラムとしては、わが国の災害医療体制、災害時管理の原則(CSCA)、災害時薬事支援の原則(PPP)、薬事関連特例措置(法規)および薬事トリアージを講義と実習を通じて学んでいきます。災害医療に対して充分な経験と知識がある医師や薬剤師から1日かけて講義を受け、大変満足感のある内容です。
国としても薬剤師に求めていることは小さくありません。2024年の元日に、能登半島地震が起こりました。日本薬剤師会の報告によりますと、のべ4000人を超える支援薬剤師や13台のモバイルファーマシーが出動したとあります。地震後に多くの薬剤師が能登半島に入っていますが、地震直後すぐに活動できる状況はなかなか難しいものがあると思います。
東日本大震災を契機として、10年ほど前より江戸川区薬剤師会では区内で起こった災害に対応できるように「江戸川災害時支援認定薬剤師制度(E-DSAP)」を構築してきました。このE-DSAPと合わせて、一般社団法人日本災害医学会の認定災害薬事研修により「支援活動に従事できる薬剤師」、「統率した行動のとれる薬剤師」、「支援が来るまで行動できる薬剤師」を目指します。